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2013年2月13日 (水)

土屋勉男ほか「現代日本のものづくり戦略 -革新的企業のイノベーション」白桃書房

 

書評:土屋勉男ほか『現代日本のものづくり戦略--革新的企業のイノベーション』

 

東京都市大学 都市生活学部 教授 井上隆一郎

 

 

 

 本著作は日本シンクタンクアカデミー副理事長、土屋勉男氏を著者の一人として2011(平成23)年10月に白桃書房より発刊されたもので、一般財団法人商工総合研究所より平成24年度中小企業研究奨励賞・経営部門準賞を受けたものである。

 

 

 

 「八万旗に男子なし」とは新撰組局長、近藤勇の言と言われている。天下泰平の三百年を徳川幕府旗本として安穏と過ごし、武士としての気概を失っていることを厳しく批判したものである。これに因んで著者の言葉を代弁すれば「大企業に経営者なし、革新なし」ということになろう。

 

 筆者は、中小企業庁『元気なもの作り企業300社』(各年版)掲載の企業などから約20社を対象に地道かつ詳細な実態調査を実施し、6社の優秀企業を抽出している。これら中小革新企業は、日本の大企業の多くが長期の停滞の中で迷走しているのに対して、各種の危機に正面から向き合い、それらを克服するとともに果敢に革新に挑みこれを成功させている。中には世界的企業との対等な提携を経て、高い世界シェアを獲得している企業も珍しくはない。

 

 これらの企業に共通しているのは、経営者の強力なリーダーシップのもとに、企業の持続性を維持しながら、高度なイノベーション能力を発揮し、中小企業=大企業下請け企業という概念を遥かに超えている。そのイノベーションは、オープンかつネットワークというキーワードを特徴とするものである。その結節点には「顔の見える経営者」の存在があり、「リードユーザー」とも呼ぶべき大企業などとの顧客関係がある。

 

 これらの事例に見る優秀企業を筆者は日本各地に存在する「地域富士」に例え、これを中心とする地域の産業組織を「地域富士型産業システム」と呼んで、今後の日本産業システムの理念型としている。日本各地に存在する地域富士型産業システムを活性化することが、将来の日本産業、日本経済活性化の鍵となり、大企業もこれらの優秀中小企業との関係を通して革新が進むという主張である。従来の大企業中心、同時に中小企業を下請けという定義のもとの産業政策ではなく、地域富士型産業システムを角にした産業政策への転換を説いている。

 

 日本産業の実力、そして中小企業の実力の評価に新たな視点を提供する画期的な著作である。

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